どうして「コーヒー」は「珈琲」という漢字を使うの?
コーヒーが登場した日本初の文献は1782年、蘭学者・志筑忠雄の訳書である『萬国管窺(ばんこくかんき)』だと言われています。
1804年には、大田蜀山人によって日本人初のコーヒー飲用体験記『瓊浦又綴(けいほゆうてつ)』が記されていますが、いずれの文献もまだ漢字表記ではありませんでした。
1850年代以降、国内への輸入が頻繁になると、オランダ語のkoffieの音を元に「可非」「可否」「黒炒豆」と様々な漢字が当てられるようになりますが、現在多く用いられる「珈琲」という決定打を日本で初めて考案したのは幕末の蘭学者・宇田川榕菴(うだがわようあん)。
なぜ「珈琲」なのでしょう。
実は「珈」「琲」それぞれの漢字の意味を考えるとコーヒーが見えてくるのです。
まず「珈」は音読みで“カ”、訓読みで“かみかざり”と読み、“髪飾り・花かんざし”を表します。
「琲」は音読みで“ハイ”、訓読みで“つらぬく”と読み、“玉をつなぐ紐・二列の玉飾り”を意味しているそうです。
音読みだけで「カ・ハイ」とコーヒーに通じますが、それならば他の漢字を当てても同じこと。
この当て字が優れている点は訓読みの意味する
ところ、つまり“玉飾りのついた花かんざし”なのです…何か想像出来ませんか?
そう!
木の枝に実った赤い実、何とコーヒーチェリーを表しているのです!
榕菴は学識だけでなくその美的センスをも発揮して「珈琲」を考案したと言えます。
「カフェ」「喫茶店」「珈琲店」の違いとは?
そんな珈琲を提供するお店、大別すると「カフェ」「喫茶店」「珈琲店」と名称が分かれます。こちらの違いは何でしょうか。
まず「カフェ」と「喫茶店」。
よくアルコールの提供の有無が判断基準と言われ、食品営業許可申請の際の“飲食店営業”と“喫茶店営業”の種類で分かれます。
アルコール提供の有無よりも、フードメニューの比率が高いなら「カフェ」。
ドリンクメニュー中心なら「喫茶店」。
というように簡単に考えると共感して頂けるのではないでしょうか。
では「喫茶店」と「珈琲店」との違いは?
というと、これも厳密ではありませんが、言うなれば“提供する商品の違い”でしょうか。
「喫茶店」はメーカーから既に煎られた豆を仕入れ、お店では淹れる作業が中心。どちらかと言えばコーヒーを傍らに社交や商談の“場を提供”します。
対して「珈琲店」は生の豆を仕入れて自家焙煎、自ら味を創造し責任を持って“珈琲を提供”するという気概が強い印象。
もちろん公的に明確な定義はありませんが、こう表現すれば、これからご紹介するお店が「珈琲店」であることをご理解いただけると思うのです。